会計年度任用職員の現状と問題点について解説します。
会計年度任用職員(非正規職員)の現状
まず、会計年度任用職員(非正規職員)の現状について、総務省公表資料等を基に概要を解説します。
非正規職員と正規職員の総数の推移
非正規職員は2005年から2020年にかけて約1.5倍に増加
都道府県や市町村など地方自治体においては、正規職員(※)は2020年は230.9万人で、2005年の261.2万人から15年間で11.6%減少しています。
一方で、非正規職員は2020年は69.5万人で、2005年の45.6万人から52%増加しています。
(※)正規職員は、警察部門・消防部門を除く(以下同じ)。
自治体職員の約5人に1人は非正規職員
2020年の職員全体のうち、正規職員数は77%、非正規職員は23%であり、約5人に1人が非正規職員です。
会計年度任用職員(非正規職員)の現状【2020年時点】
総数
非正規職員のうち、会計年度任用職員の総数は62.2万人です。
そのうち、フルタイムで任用されている職員は7.0万人で全体の11.2%、パートタイムで任用されている職員は55.3万人で全体の88.8%を占めてます。
性別
会計年度任用職員の約4分の3を女性が占めています。
職種別
会計年度任用職員の約3割が「一般事務職員」です。次いで「技能労務職員」「保育所保育士」が多くなっています。
団体区分別にみると、すべての団体区分で「一般事務職員」が最も多くなっています。
次いで、都道府県では「技能労務職員」「教員・講師」が多く、指定都市・市区・町村では「保育所保育士」「技能労務職員」が多くなっています。
パートタイム会計年度任用職員の勤務時間別職員数
パートタイム会計年度任用職員の1週間あたりの勤務時間は、「23時間15分以上31時間00分未満」が最も多くなっています。
この区分帯は、たとえば、週3日勤務(1日7時間45分、週23時間15分)、週4日勤務(1日7時間、週28時間)、週5日勤務(1日6時間、週30時間)のような勤務時間を設定する場合に該当します。
主な職種における給料(報酬)
時給平均額は、任用数が最も多い「事務補助職員」で990円、「給食調理員」は1,014円、「保育所保育士」は1,156円です。
再度任用時の空白期間の有無
法改正前は、任用期間が終了し再度任用する際、退職手当や社会保険料等を負担しないようにするために、新たな任期と前の任期との間に一定の期間(いわゆる「空白期間」)を設けることが問題視されていました。
現在は、不適切な「空白期間」は設定されていません。
休暇制度の有無
全ての部門・職種において、「夏季休暇」や「忌引休暇」「結婚休暇」「災害等による出勤困難」などの有給での休暇を制度化している団体が全体の88.2%です。
しかし、0.8%の団体においては、無給休暇として措置されている部門・職種が存在し、11.0%の団体において休暇が措置されていない部門・職種が存在します。
また、99.7%の団体で、労働基準法の規定に沿った再度任用時の年次有給休暇の繰り越し措置がなされています。
会計年度任用職員の問題点
次に、会計年度任用職員(非正規職員)の問題点について、現状を踏まえて考察します。
任用期間の更新回数に上限があり雇止めにあう
会計年度任用職員の任期は、最長1年以内(会計年度)です。
そのため、翌年度に同じ職に任用される場合でも、あくまで「新たな職に改めて任用されたもの」と整理されます。
また、任用期間の更新回数が原則2回までであり、任用を開始した年度を含む連続した3か年度が任用期間の上限となります。
つまり、3年間働くと、雇止めにあうことになります。
再度任用されても条件付き採用となる
任期を更新し、再度任用されることとなったとしても、翌年度のはじめの1か月間は条件付き採用(試用期間)となります。
これは前述のとおり、同じ職に任用される場合でも、1年ごとに、あくまで「新たな職に改めて任用されたもの」と整理されるからです。
再度任用されるということは、能力や成績で一定の評価を受けているはずですが、毎年度試用期間が設けられることで、会計年度任用職員は不安を抱えながら働かなければなりません。
5年ルールが適用されない
民間企業では、労働契約法に基づき、有期雇用労働者が5年以上働けば、労働者からの申し出により無期労働契約に切り替えられる「無期転換ルール」があります。
しかし、会計年度任用職員は地方公務員の身分であるため、労働契約法が適用されず、無期転換ルールも適用されません。
そのため、任用期間が通算5年以上になったとしても、任期の定めのない正規職員に転換されることはありません。
会計年度任用職員が正規職員になるためには、学卒者や民間経験者向けの競争試験を受験し、合格する必要があります。
制度移行後、年収が下がった自治体がある
制度移行後、ボーナス(期末手当)が支給されるようになり、年収アップによる待遇改善が期待されました。
しかし、NHK非正規公務員問題取材班の調査によると、実際には「月給が減る」「年収は変わらない」「年収ベースでも減る」とする自治体が複数存在します。
ボーナスを設けたことで、そのボーナス支給相当分が月給から引き下げられ、結果的に従来の年収が維持できなくなった事例が生じています。
NHK非正規公務員問題取材班の調査(調査期間:2020年2月〜3月、調査対象:全国の県庁所在市、政令市、東京都と東京23区の合計75自治体)では、月給あるいは年収が減る職員がいるかという問いに対し、31自治体(41%)が「毎月の給料が減る職員がいる」と回答。
また多くの自治体が「月給が減る分、ボーナスを支給するので年収では変わらない」などとしたものの、10自治体は「年収ベースでも減となる」と回答した。
特に東京都と23特別区を除く残りの51自治体(県庁所在市と政令市)では、30自治体、約60%で月例給を減額するという調査結果であった。相対的に財政力のある県庁所在市や政令市でこの状態なのだから、財政規模が小さい自治体の惨状は容易に推測できる。
出典:議員NAVI:議員のためのウェブマガジン (d1-law.com)
年収200万円未満が5割以上で時給・年収が低い
任用数が最も多い「事務補助職員」の時給平均額は990円です。
これは、民間企業のパートタイムの時給平均額1,412円や、地方公務員の正規職員の時給平均額2,045円に比べて低い水準となっています。
公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)が行った会計年度任用職員向けのアンケート調査によると、回答者のうち、5割以上が年収200万円未満、主に生計を担っている女性でも7割が年収250万円という状況です。
また、回答者の42%が「給与が低い」と回答しています。
さらに、「年収は完全にワーキングプア。」「給与が低く1人では生活できない不安。」「自身の給料だけでは、生活が厳しいため、パートナーに何かあった場合、貧困家庭となる不安は常になる。」など、給与が低いことに対するリアルな痛切な声が寄せられています。